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「管理薬剤師なのに、そんなことも知らないんですか?」
配属された初日から、私はこの言葉を何度も聞きました。分からないことを質問するたびに、ため息と一緒に返ってくるのです。
事務さんの言い方がきつくて、話しかけるのが毎日こわいです。

この記事では、厳しい事務さんや先輩とどう付き合えばいいかが分かります。私が1年目に、厳しかった事務スタッフに「理由」を聞いた話が土台です。
後半では、厳しい指導とパワハラの線引きと、困った時の相談先もまとめました。
結論:理由を知ると、きつさの受け止め方が変わる
先に結論です。厳しい人とうまくやる近道は、相手を変えることではありません。相手が厳しい理由を知ることです。
理由が分かっても、言い方を好きになれるとは限りません。でも、腹が立つ回数は減っていくはずです。

人は受け入れられなくても、理解できたら許せます。これが1年目の私の学びです。
ただし、これは「普通の厳しさ」の話です。人格を否定される、怒鳴られ続けるなどの場合は別です。その時は、記事の後半の相談先を使ってください。
1年目の私が浴びた、厳しい言葉
私が新卒で配属されたのは、とても忙しい門前薬局でした。1年目から管理薬剤師を任されたのに、マニュアルはありません。
「見て覚えろ」の職場です。分からないことを聞くたびに、冷たい言葉が返ってきました。

- 「管理薬剤師なのに、そんなことも知らないんですか?」
- 「これぐらい知っててもらわないと困ります」
- 「挨拶がうるさいです」
最後のは、さすがにこたえました。元気に挨拶しただけなのに(笑)。
正直に言うと、心が折れそうな日もありました。あなたにも、言われた一言が頭から離れない夜はありませんか?
辞めずにすんだのは「自分原因論」のおかげ
踏みとどまれたのは、自分原因論という考え方のおかげです。問題が起きた時、まず自分にできたことを考える習慣のことです。
相手のせいにしても、状況は動きません。だから私は、現場で分からなかったことをメモしました。家に帰ってから、毎日復習しました。
自分原因論は、自分を責め続けることではありません。自分で変えられる所だけを、自分から変えるための考え方です。
理由を聞いたら、見方が変わった
その薬局には、とても仕事ができる事務スタッフがいました。薬の置き場所はそこらの薬剤師よりくわしく、分包機の操作もとても速い人です。
そのぶん周りにも厳しく、年上の薬剤師たちまで顔色をうかがっていました。
うちの薬局にも、まさにそういう人がいます。

私は、その人と普通に話せる関係になってから、思い切って聞いてみました。
「仕事はすごくできるのに、周りにも厳しいのは何か理由があるんですか?」
怒られるかと思いました。でも、返ってきた答えは意外なものでした。
え、そんなこと本人に聞いて大丈夫だったんですか?


関係ができてからだったので、笑いながら答えてくれました。「私、厳しいですよね。言われることが多いです」と。
その人は、自分ではそれが普通だと思っていました。その人なりの事情があって、自分に厳しく生きてきた人でした。だから、周りへの基準も自然と高くなっていたのです。
その日から、その人の見え方がまったく変わりました。「意地悪な人」ではなく、「自分に厳しい人」に見えるようになったのです。

| 受け入れる | 理解する | |
|---|---|---|
| 意味 | 相手のやり方を好きになる | 相手がそうする理由を知る |
| 難しさ | 無理なことも多い | 聞けばできることが多い |
| 変わること | 言い方への好き嫌い | 腹が立つ回数 |
受け入れられなくても、理解できたら許せる。言い方を好きになる必要はありません。理由を知るだけで十分です。
厳しい人の背景に考えられること
厳しさの理由は、人それぞれです。ここでは、私が1年目の薬局で見たことをもとに、考えられる形を挙げます。あくまで一例で、全員に当てはまるわけではありません。
| 考えられる背景 | 表に出やすい言い方 | こう見ると楽になる |
|---|---|---|
| 長く店を支えてきた責任感 | 「これぐらい知ってて」 | ミスを防ぎたい気持ちの裏返し |
| 忙しくて余裕がない | ため息・短い返事 | あなたへの評価ではなく、時間のなさ |
| 自分への基準が高い | 「普通はこうでしょ」 | 本人は厳しいつもりがない |
| 職場の空気が悪い | 誰にでもとげがある | 個人より職場の問題 |
あなたの職場の厳しい人は、どれに近いですか?
4つ目は見落としやすいところです。私の配属先では、薬剤師同士のぎすぎすした空気を、事務スタッフも心底いやがっていました。
つまり、きつい言い方は「その人の性格」だけで起きるとは限りません。職場の空気が、人をとげとげしくすることもあります。
私が嫌われているわけじゃない、と思えるだけで少し楽です。

話しかけ方:関係を作ってから理由を聞く5つのステップ
いきなり「なぜ厳しいんですか」と聞くと、ケンカを売っているように聞こえます。順番が大事です。
私が実際にやったことに、気をつけたい点を足して、5つのステップにしました。

1. 相手の得意を認めて、頼る
まずは、相手の仕事ぶりを本気で認めます。おだてるのではなく、頼るべきところを素直に頼るのです。
私は、その事務スタッフの腕前を心から尊敬していました。だから、その人が得意なことは、素直に頼りました。
あなたの職場の厳しい人は、何が得意でしょうか?
2. 小さなことを教わる
質問は、相手を認める行為でもあります。「これ、どうやるのが早いですか?」くらいの小さな質問から始めます。
教わったことは、メモして次から自分でやります。私も1年目は、現場で分からなかったことをメモして、家に帰ってから毎日見直していました。
3. 感謝を言葉と行動で返す
ありがとうを言うのは当然です。そのうえで、相手の負担を減らす行動で返します。
私の場合は、待合室で怒鳴り声が聞こえたら、誰よりも先にカウンターへ出ました。事務さんが矢面に立たなくてすむようにです。
4. 普通に話せる関係になってから、理由を聞く
雑談ができるようになったら、理由を聞くタイミングです。責める調子にしないのがコツです。
| 避けたい聞き方 | 伝わりやすい聞き方 |
|---|---|
| 「なんでそんなにきついんですか?」 | 「仕事すごくできますよね。周りにも厳しいのは何か理由があるんですか?」 |
| 「その言い方、やめてもらえますか?」 | 「私、どこを直せば早くなりますか?」 |
| 「みんな困ってますよ」 | 「仕事の基準、教えてもらえますか?」 |
感心している気持ちのまま聞くと、相手も答えやすくなります。
5. 返ってきた答えを否定しない
どんな答えが返ってきても、「そうだったんですね」で受け止めます。アドバイスや反論はいりません。
聞いた話は、ほかの人に広めないでください。打ち明けてくれた信頼を守ることが、次の関係につながります。

理由を聞くのは、相手を変えるためではありません。自分の見え方を変えるためです。
やりがちなNG:ご機嫌取りと、仕事の取りすぎ
関係を良くしたくて、逆効果になる動きもあります。私が見たこと、やってしまったことを2つ書きます。
1つ目は、顔色をうかがってご機嫌を取ることです。配属先では、年上の薬剤師たちがまさにそうでした。でも、それで職場の冷めた空気が変わることはありませんでした。
2つ目は、相手の仕事を良かれと思って奪うことです。私はレジ締めや掃除を手伝おうとして、こう言われました。
「ここの仕事はいいので、薬剤師の仕事をしてください。私たちの仕事がなくなります」

関係づくりのコツ
- おだてるより、得意なことを頼る
- 相手の仕事は奪わず、自分の持ち場で支える
- 責任は自分が取る姿勢を、行動で見せる
あなたの職場で、いちばん「取られたくない仕事」を持っているのは誰でしょうか? そこを尊重するだけでも、とげは減っていきます。
厳しい指導とパワハラは違う:線引きと相談先
ここまでは、普通の厳しさの話でした。でも、厳しさの度を超えて、パワハラに当たる場合は、自分だけで抱えないでください。
パワハラは、法律(労働施策総合推進法)で、次の3つがそろうものとされています。
- 優越的な関係を背景にした言動であること
- 業務上必要で相当な範囲を超えていること
- 働く人の就業環境が害されること
出典:厚生労働省「スタートアップ労働条件」内「ハラスメント」(2026年10月22日閲覧)
逆に、仕事に必要で、やり方も行き過ぎていない指示や指導は、パワハラに当たりません。厳しいだけでは、パワハラとは限らないということです。
この点は、下の愛知県雇用労働相談センターの資料にも書かれています。
じゃあ、どこからがパワハラなのか自分では分からないです。


その線引きは、自分だけで決めなくて大丈夫です。迷った時に使える相談先を、このあと3つ書きます。
大事なのは、上司だけの話ではない点です。仕事の知識や経験が豊富で、その人の協力がないと仕事が回らない同僚も、1つ目の「優越的な関係」に当たりえます。
下の資料に、そう書かれています。ほかの2つの条件もそろうかは、別に見ます。薬局の「ベテラン事務さん」は、この1つ目に当てはまることがあります。
出典:愛知県雇用労働相談センター「Ⅴ 職場におけるパワーハラスメント」(2026年10月22日閲覧)

同じページでは、パワハラの形として6つの類型が挙がっています。身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害です。
職場の「いじめ・嫌がらせ」の相談は、珍しいものではありません。令和7年度の民事上の個別労働紛争の相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」は55,614件でした。14年連続で最も多い相談です。
出典:厚生労働省「「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」(2026年7月7日公表・2026年10月22日閲覧)
当てはまるかどうかを、自分で決めきる必要はありません。判断に迷う時こそ、相談してください。
相談先1:会社の相談窓口
パワハラを防ぐための措置は、会社の義務です。中小企業も2022年4月1日から義務になりました。
出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(2026年10月22日閲覧)
会社がやることには、相談窓口を作って、働く人に知らせることも含まれます。
出典:厚生労働省「スタートアップ労働条件」内「ハラスメント」(2026年10月22日閲覧)
就業規則や社内の掲示、社内メールで、相談窓口の連絡先を探してみてください。
相談先2:総合労働相談コーナー
社内では言いにくい時は、国の窓口があります。総合労働相談コーナーは、各都道府県の労働局や労働基準監督署などにあり、予約なしで無料で相談できます。いじめ・嫌がらせやパワハラも対象です。
出典:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(2026年10月22日閲覧)
探し方は次のとおりです。
- 「総合労働相談コーナー」と、自分の都道府県名を並べて検索する
- 結果の中から、アドレスに「mhlw.go.jp」が入っている労働局の公式ページを開く
- command+F/Ctrl+F で「総合労働相談コーナー」を探し、近い場所と電話番号を控える
相談先3:こころの耳(気持ちがつらい時)
気持ちが限界に近い時は、厚生労働省の働く人向けサイト「こころの耳」に相談窓口があります。匿名・無料で、電話・SNS・メールで相談できます。
| 方法 | 受付の時間 |
|---|---|
| 電話(0120-565-455) | 平日17時〜22時、土日10時〜16時(祝日・年末年始は休み) |
| SNS | 平日17時〜22時、土日10時〜16時(休みの日は公式ページで確認) |
| メール | 24時間受付(1週間以内に返信) |
出典:こころの耳「こころの耳の相談窓口」「電話相談」(2026年10月22日閲覧)
受付の締め切りは終わりの時刻より少し早いです。「こころの耳 相談窓口」で検索し、公式ページで最新の時間を確かめてから使ってください。
相談の前に、言われた日時・言葉・その場にいた人をメモしておくと、話が伝わりやすくなります。
よくある質問
Q. 理由を聞くのがこわいです。聞かなくてもいいですか?
聞かなくても大丈夫です。まずはステップ1〜3の「頼る・教わる・感謝する」だけでも、関係は変わっていきます。理由は、雑談ができるようになってからで十分です。
Q. 理由が分かっても、やっぱり言い方がつらいです
それで普通です。理解できても、言い方を好きになる必要はありません。つらさが続いて眠れない日があるなら、上の相談先を使ってください。
Q. 職場を変えたほうがいいのか迷っています
自分で変えられる所を試しても空気が変わらないなら、職場の仕組みの問題かもしれません。次の職場の見分け方は人間関係が悪い薬局の見分け方にまとめています。
まとめ:明日は「教わる質問」を1つだけ
厳しい事務さんや先輩とうまくやるコツを、振り返ります。
この記事のまとめ
- 厳しさには、たいてい理由がある
- 受け入れられなくても、理解できたら許せる
- 頼る・教わる・感謝するで関係を作ってから、理由を聞く
- パワハラに当たりそうな時は、一人で抱えず相談する
1年目の私は、毎日のように厳しい言葉を浴びていました。でも、理由を知ってからは、同じ人の見え方が一気に変わりました。
明日、相手の得意なことを1つだけ教わってみてください。それが、見え方が変わる最初の一歩になります。
少人数の職場で摩擦を減らすほかの工夫は、狭い薬局の人間関係の保ち方でも書いています。
