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一人薬剤師の職場って、そもそも大丈夫なのかな…?

昼休みが取れない。熱が出ても代わりがいない。休みの前の日に「明日は誰が回すのか」と考えてしまう。一人薬剤師の職場にいると、つらさの原因が自分の力不足なのか職場のつくりなのか、分からなくなります。私は1年目から薬局長(管理薬剤師)を10年やり、そのうち2回、店舗の薬剤師が自分1人になりました。この記事では、一人薬剤師が違法になる線はどこか、昼休みをどう考えるか、次の職場で同じ目に遭わないために求人票・見学・面接で何を見るかを書きます。
結論:人数より「一人で回す前提になっているか」を見る
先に結論を書きます。一人薬剤師は、それだけで違法でもなければ、体を壊すと決まった働き方でもありません。処方箋の枚数が基準の中に収まっていて、休憩と急な欠勤の代わりが用意されているなら成り立ちます。
つらくなるのは、一人で回すことが前提になっていて、休憩・有給・急な欠勤の穴埋めが設計されていない職場です。だから見るのは薬剤師の人数ではなく体制です。確かめる場所は3つあります。求人票の数字、見学中に見える動き、面接で聞く質問です。
体制を確かめる3つの場所
- 求人票の数字
- 見学中に見える動き
- 面接で聞く質問

私は薬剤師5人から1人になり、体を壊しました
ここは私の一次情報です。美談にする気はないので、そのまま書きます。
3年目の冬、勤めていた店舗で連鎖退職が起きました。常時数名いた薬剤師は次々に辞め、最後に残ったのは私1人でした。処方箋の単価が高く、月2400枚前後を扱う忙しい店舗でした。当時の体制が薬剤師の人数の決まり(次の節で説明します)を満たしていたかどうかは、前年の実績や診療科の内訳によって決まるため、ここでは判断しません。
私はその時、一言も「きつい」と言いませんでした。その少し前に他社の話を持ち出して昇給を取り、信用を失った経験があったからです。代わりに、黙って現場を回し続けました。
- 昼休みは取れず、栄養剤を流し込んで終わりにしていた
- インフルエンザで40℃の熱が出ても通常どおり出勤した
- 帯状疱疹が出て、職場へ向かう足が重くなった
人が辞めたら、残った人が頑張るしかないですよね…。


つらい時に「きつい」と伝えるのは、甘えではありません。私は一言も言わずに回しましたが、今は誇れる話ではないと思っています。
会社の評価は上がりました。4年目には、日頃から気にかけてくれていた60代の役員が社長と掛け合い、私の年収は800万円になりました。数字の上では報われた形です。
それでも、この話を「がんばれば報われる」とは書けません。私が差し出したのは健康でした。40℃で調剤していた自分は、患者さんにとっても危ない状態だったと思います。
しかも私は、同じことを2回やりました。その後、会社の判断で正社員の薬剤師が私だけになり、翌年には新型コロナウイルスに感染しても出勤しました。周りと距離を取って働きましたが、今振り返れば、感染を広げかねない判断でした。
2回通って分かったのは、一人薬剤師のつらさは気合の問題ではないということです。代わりがいない構造の問題なので、個人の頑張りでは解けません。だからこそ、次の職場は構造で選んでほしいのです。
「一人薬剤師は違法か」は、人数ではなく処方箋の枚数で決まる
一人薬剤師って、法律違反じゃないんですか?

一人薬剤師がそれだけで違法になるわけではありません。薬局に必要な薬剤師の数は省令で決まっていて、一日平均取扱処方箋数を40で除して得た数以上とされています。1に満たないときは1とし、端数が出たときは切り上げます。
1日平均40枚までなら、必要な薬剤師の数は1人という計算になります。40枚を少しでも超えると2人、80枚を超えると3人と、40枚ごとに1人ずつ増える数え方です(端数は切り上げ)。なお人数の基準とは別に、同じ省令では開店時間内は常時、調剤に従事する薬剤師が勤務していることも求められています(同省令第1条第1項第1号。あとで説明する薬剤師不在時間だけが例外です)。
出典:厚生労働省「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」(昭和39年厚生省令第3号・2026年9月28日閲覧)

ここで間違えやすいのは「今日は50枚さばいたから違法だ」という読み方です。基準に使う枚数は、前年の総取扱処方箋数を業務を行った日数で割った数です。眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は3分の2として数えます。
つまり、忙しい日が何日あったかではなく、前年の実績で見ることになります。逆に、処方箋が増え続けているのに薬剤師を増やさない状態は、基準を満たさなくなるおそれがあります。当てはまるかどうかは科目の内訳や届出の中身で変わるため、私が外から断定できることではありません。気になるときは、都道府県や政令市の薬務課(薬事を担当する窓口)に相談できます。
もう1つ知っておくとよいのが、管理薬剤師の掛け持ちの決まりです。薬局の管理者は、原則としてその薬局以外の場所で薬事に関する実務に従事してはならないとされています。都道府県知事の許可を受けたときは例外になります。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第7条、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第7条第3項に規定する薬局の管理者の兼務許可の考え方について」(2019年・2026年9月28日閲覧)
見学や面接で「昼だけ他店の管理薬剤師が来ます」と説明されたら、責める必要はありませんが、どういう扱いで来ているのかを聞いておくと安心です。
昼休みが取れないのは、薬剤師の数とは別の問題
「一人だから昼休みがないのは仕方ない」と言われることがあります。ここは、薬剤師の人数の話と分けて考えたほうがよいところです。
労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与えることが決められています。休憩は自由に利用させる必要があります。
そして、仕事が発生したらすぐ対応しなければならない状態で待っている時間(手待ち時間)は、休憩ではなく労働時間として扱われるのが一般的な整理です。開局したまま奥で食事をして、呼ばれたら出ていく形は、休憩を取ったことにならない可能性があります。
出典:労働基準法(昭和22年法律第49号)第34条、厚生労働省「休憩時間は法律で決まっていますか。」(2026年9月28日閲覧)
開けたまま奥で食べるしかない職場だったら、どうすればいいんでしょう…?


昼休みがないのを、私は自分の頑張りで埋めていました。でも休憩は気合で取るものではなく、会社が形を決めるものだと考えてください。

一人薬剤師でも休憩を取る形は2つです。昼の時間帯を閉局にするか、他の店舗から薬剤師が来て交代するかです。どちらも現場の気合ではなく、会社が決める設計の話です。
なお「薬剤師不在時間」という決まりもあります。これは、その薬局の薬剤師が薬局以外の場所で業務を行うために、やむを得ず一時的に不在になる時間のことです。1日の不在時間は4時間または開店時間の半分のうち短い方までとされ、その間は調剤室を閉鎖し、調剤に応じられないことと理由を店の内外に掲示します。休憩のために店の中で休む時間とは別の話です。実際の届出や運用は、会社と都道府県・政令市の薬務課で確認してください。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第1条第2項(薬剤師不在時間の定義)・第14条の3第3項(調剤室の閉鎖)・第15条の16(掲示)、薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和39年厚生省令第3号)第1条第1項第7号(1日の薬剤師不在時間の上限)、厚生労働省医薬・生活衛生局長通知(薬生発0926第10号・2017年・2026年9月28日閲覧)
求人票で見る所
求人票は「書いていないこと」にも意味があります。募集のときに明示しなければならない労働条件は法律で決まっていて、始業と終業の時刻、休憩時間、休日などが含まれます。2024年4月からは、就業場所と業務の変更の範囲も明示する事項に加わりました。
| 見る所 | どう読むか | 引っかかる書き方 |
|---|---|---|
| 薬剤師の人数 | 「薬剤師1名・事務2名」なら一人薬剤師 | 人数の記載がない |
| 1日の処方箋枚数 | 1日平均40枚ごとに薬剤師1人が基準(前年の実績で計算) | 「店舗により異なります」だけ |
| 休憩時間 | 60分などの分数で書かれているか | 休憩の記載がない |
| 開局時間 | 昼に閉める時間があるか | 通しで開けていて休憩の説明がない |
| 年間休日と有給 | 日数で書かれているか | 「取得しやすい環境です」だけ |
| 変更の範囲 | 応援や異動の広さが読める | 「全店舗」とだけ書かれている |
出典:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3、厚生労働省「2024年4月から、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際、明示しなければならない労働条件が追加されます」(2024年・2026年9月28日閲覧)
「取得しやすい環境です」と書いてあったら、そのまま信じてしまいます…。

右の列に当てはまる求人が、悪い会社という意味ではありません。ただ、聞かないと分からない部分が多い求人です。採用する側にいたので分かりますが、紙に書かれていない条件は、入ってから交渉しにくくなります。
求人票の段階で体制が読めないときは、担当者が間に入る形を使う手もあります。ここから紹介するリンクには広告(アフィリエイト)が含まれます。薬キャリAGENTのような薬剤師に絞ったサービスなら、店舗ごとの人数や休憩の取り方を応募の前に確認してもらえるか、相談してみる方法があります。どこまで確認してもらえるかは、会社や求人によって違います。
見学で見る所
見学は、条件の紙では分からない部分を見るためのものです。設備の新しさより、人の動きを見てください。
| 見る所 | どう見るか | 気になるサイン |
|---|---|---|
| 昼の時間帯 | その時間に見学に行く | 薬剤師が食事を取れず待合に人が溜まっている |
| 調剤室の人数 | 求人票に書かれていた体制と合っているか | 書かれていた人数と違う |
| 確認の流れ | 作る人と確かめる人が分かれているか | 一人で作って一人で確かめている |
| 掲示物 | 開局時間・不在時の掲示・シフト表 | 掲示が古いまま人数が読めない |
| 事務スタッフの余裕 | 薬剤師以外の仕事を任せられているか | 薬剤師が受付も在庫も抱えている |
| 在庫の棚 | 期限の近い薬や動かない在庫がないか | 棚が詰まったまま整理されていない |
見学に行っても、どこを見ればいいか分かりません…。

私がとくに見るのは「昼」「棚」「事務スタッフの余裕」の3つです。シフトの中身は外から見ても分かりにくいので、見学では目で確かめられるところを優先します。
私の8年目から10年目は一人薬剤師でしたが、現場は回っていました。事務スタッフが育っていて、薬剤師がやらなくてよい仕事を任せられたからです。一人薬剤師が成り立つかどうかは、薬剤師以外の人が育っているかで大きく変わります。

見学で事務スタッフの余裕を見てほしいのは、このためです。私が一人で回せた時期を支えていたのは、事務スタッフでした。
面接で聞く質問
聞き方には少しコツがあります。責める形ではなく「体制を知りたい」という形にすると、答えが返ってきやすくなります。
| 質問 | なぜ聞くか | 答えで見る所 |
|---|---|---|
| 1日の処方箋の枚数と薬剤師の人数を教えてください | 薬剤師の人数の決まり(員数の基準)に関わる | 数字が即答で出るか |
| 昼休みはどの時間に、どうやって取っていますか | 手待ちになっていないか | 時間帯が具体的に出るか |
| 薬剤師が急に休むときは、どなたが入りますか | 代わりの仕組みがあるか | 本部の応援や近隣店舗など仕組みで答えるか |
| 昨年、この店舗の薬剤師は有給を何日取れましたか | 実際に取れる体制か | 「取れます」で終わらないか |
| この店舗の管理薬剤師は、この1年で何人替わりましたか | 定着の様子 | 人数と理由を言えるか |
| 在宅や加算の算定は、誰がどこまでやっていますか | 一人に集中していないか | 分担を説明できるか |
こんなことを聞いたら、面倒な人だと思われませんか?

私は採用面接をする側にもいました。その席から言うと、この6つは答えに困る質問ではありません。体制が整っている会社は、むしろ話したい内容です。逆に、数字が出てこない、話が人柄の説明に流れる、という反応が続くときは、店舗の中身を本部が把握していない可能性があります。
私が退職した店舗も、私が入る前は管理薬剤師が1年ごとに替わる店でした。替わった回数は、現場の負荷をいちばん素直に映す数字だと思っています。
一人薬剤師でも成り立つ条件
一人体制を全部否定する気はありません。枚数が落ち着いていて、自分の判断で進められ、患者さんと深く付き合える良さもあります。私が10年目に辞めるとき、その店舗は患者さんが通院日以外にも顔を出してくれる場所になっていました。
成り立つ条件を並べると、次のようになります。
- 処方箋の枚数が基準の中に収まっている
- 昼に閉める時間があるか、交代で休憩を取る仕組みがある
- 急な欠勤に本部や近隣店舗が入る決まりがある
- 事務スタッフが育っていて、薬剤師以外の仕事を任せられる
- 在宅や加算の算定を一人に背負わせていない
この5つが揃わないまま人数だけ1人になっている職場は、私が通った道と同じになりやすいです。今の職場が当てはまるかを測る目安としても使えます。
ここから紹介するリンクには広告(アフィリエイト)が含まれます。今の条件が世の中の相場から外れているかを知りたいだけなら、まず求人の出方を見てみるだけでも材料になります。派遣という働き方から複数人の店舗を見る方法もあり、ファルマスタッフのように派遣を扱うところなら、数人体制の現場を経験してから決める選び方もできます。
困ったときの相談先
- 薬剤師の人数や掲示など薬事の決まり → 都道府県や政令市の薬務課
- 休憩・残業・有給の扱い → 労働基準監督署
- 紹介会社の進め方が不安 → 都道府県労働局の人材サービスを担当する部署
- 紹介会社の許可や実績 → 厚生労働省「人材サービス総合サイト」(2026年9月28日閲覧)
昼休みが取れなかった日は、日付・時間・その間にしていた仕事を1行ずつ残しておく。労働基準監督署に相談するときの材料になります。
制度の当てはめは状況によって変わります。気になる場合は、労働基準監督署などの公的な窓口に早めに相談するのが安全です。
よくある質問
一人薬剤師は違法ですか
人数だけでは決まりません。必要な薬剤師の数は、前年の実績にもとづく処方箋の枚数から計算する決まりです(基準と出典は上の節に書きました)。枚数が増えているのに薬剤師が1人のままのときは、都道府県や政令市の薬務課に相談してみてください。
昼休みがまったく取れません。どうすればいいですか
まず記録を残してください。何時から何時まで何をしていたかを書いておくと、手待ちになっている時間が見えます。会社に伝えても変わらないときは、労働基準監督署に相談できます。
一人薬剤師の経験は、転職で不利になりますか
不利になるとは限りません。私が採用面接をする側で見ていたときは、一人で店舗を回した経験は「任せられる」材料として読めましたが、どう評価されるかは会社によって違います。無理をした量を話すより、どんな仕組みを作ったかを話すほうが伝わります。
見学を断られたら、やめたほうがいいですか
忙しさや患者さんへの配慮で断られることもあるので、断られた事実だけで決める必要はありません。ただ、理由の説明がないまま見せてもらえない場合は、判断の材料が1つ減ったと受け取ってよいと思います。担当者が付くサービスを通して、見学を頼んでもらう方法もあります。
まとめ
一人薬剤師がきついのは、あなたの体力や気合が足りないからではありません。代わりがいないという構造のせいです。私は同じ構造に2回入り、40℃で出勤し、帯状疱疹を出し、感染しても休みませんでした。どれも今は誇れる話ではありません。
次の職場では、人数ではなく体制を見てください。求人票で枚数と休憩を数える、見学で昼の時間に行く、面接で急な欠勤の代わりを聞く。この3つで、同じ道に入る確率は下げられます。
次の職場で確かめる3つ
- 求人票で、処方箋の枚数と休憩を数える
- 見学は、昼の時間に行く
- 面接で、急な欠勤の代わりを聞く
すぐ動く必要はありません。ただ、今の職場が当たり前なのかを確かめる手段を持っておくと、気持ちは軽くなります。薬局以外(病院・企業・ドラッグストア)も並べて見たい人は、株式会社マイナビが運営しているこちらから。
薬剤師の求人を扱うサービスをもう1つ見比べたい人は、こちらも公式サイトで条件を確認できます。
どこを使うにしても、最初に伝える言葉は同じです。1日の処方箋の枚数、休憩の取り方、急な欠勤の代わり。この3つを一緒に確かめてくれる相手かどうかで、任せられるかは見えてきます。
