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転職理由って、正直に言わないほうがいいんですか?

「辞めたい理由は、正直に言えば人間関係です」。そう思っていても、面接でそのまま言っていいのか分からなくて、手が止まる人は多いと思います。嘘をつきたいわけではなく、正直に言った結果ここも落ちたら、という不安があるからです。私は1年目から薬局長(管理薬剤師)を10年やり、後半は人事として薬剤師の採用面接も担当していました。この記事では、面接官が転職理由の何を確かめているのか、人間関係が本音のときにどう言えばいいのか、そして辞めるときの段取りまでを、聞く側の席から書きます。

結論:理由は変えなくていい。変えるのは話す範囲と順番です
先に結論です。転職理由に嘘をつく必要はありません。変えるのは、どこまで話すかと、どの順番で話すかの2つだけです。
私が面接をしていたときは、「立派な理由かどうか」で採点はしていませんでした。見ていたのは、その理由がこの会社でも起きるかどうかです。だから人間関係と言った瞬間に不利になるのではなく、不満だけで話が終わったときに判断がしづらくなります。
型は1つで足ります。起きていた事実を一行、自分が試したことを1つ、これからやりたいことを1つ。この順番にするだけで、同じ内容が「不満」から「これからの話」に変わります。
面接官が転職理由で確かめている3つのこと
私が採用面接をしていたとき、転職理由を聞いて確かめていたのは次の3つでした。言い方は会社ごとに違っても、知りたいことはだいたいこのあたりに集まります。
| 確かめていること | なぜ気にするのか |
|---|---|
| 同じ理由で、またすぐ辞めることにならないか | 採用には費用と教える時間がかかる |
| その理由は、うちの会社なら変えられるものか | 変えられないなら、入っても同じことが起きる |
| うまくいかないとき、人のせいだけで終える人か | 現場で起きた問題を一緒に直せるかを見ている |
困っていた話をするだけで、「人のせいにする人」と思われないか心配です…。

3つ目だけ、少し補足します。これは「不満を言うな」という意味ではありません。困っていた事実を話すのは当然で、そのうえで自分は何を試したのかが一言あるかどうか、という話です。
採用の合否には、これ以外の事情もかなり関わります。私が働いていた店舗では、パート勤務の薬剤師から正社員になりたいと相談を受けたことがありますが、会社の答えは「今のうちには正社員は2人要らない」でした。椅子を出すかどうかは会社のお金の判断であることが多く、理由の言い方だけで決まるわけではありません。ここを知っておくと、面接の受け止め方はだいぶ軽くなります。
人間関係が本音でも、隠さなくて大丈夫です
人間関係が理由で辞めることは、珍しいことではありません。厚生労働省の雇用動向調査(令和6年)で、転職して新しい職場に入った人が前の職場を辞めた理由を見ると、女性では「その他の個人的理由」(24.3%)を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(12.8%)が最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」(11.7%)が挙がっています。割合や順番は年と男女で変わるので、最新の数字はもとの表で確かめてください。
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(令和7年公表)の「転職入職者が前職を辞めた理由別割合」
人間関係で辞める人って、少なくないんですね。

つまり面接官にとっても、聞き慣れた理由です。問題は理由そのものではなく、話が「あの人がひどかった」で終わってしまうことです。面接官は前の職場を見ていないので、その人がひどかったのかどうかを確かめる方法がありません。確かめられない話が長く続くほど、判断の材料が減っていきます。
だから、人ではなく仕組みの言葉に置き換えます。誰かの性格の話を、業務の分担・手順・体制の話にする。これは嘘をつくことではなく、相手が判断できる形に言い換えることです。
言い換えの例
左が本音、まん中が面接で話す形です。中身は変えていません。
| 本音 | 面接で話す形 | なぜ伝わるか |
|---|---|---|
| 人間関係が合わなかった | 業務の分担や手順が人によって違い、直す話が進みにくい職場でした。仕組みを整える側で働きたいです | 直したい対象が仕事の話になっている |
| 上司と合わなかった | 判断の基準が共有されておらず、確認のやり直しが多くありました。基準を文章にして残す働き方をしたいです | 次の職場で何をするかが見える |
| 残業が多かった | 人数に対して処方箋の枚数が多く、勉強の時間が取れませんでした。学ぶ時間を確保して在宅にも関わりたいです | 数量の話なので相手が確かめられる |
| 給料が上がらない | 加算の取得や在庫の見直しで利益に関わってきました。やったことが評価に反映される会社で続けたいです | 何をしてきたかとセットになっている |
| 一人薬剤師がつらい | 一人体制で、判断に迷ったとき相談できる相手がいませんでした。複数人で確認し合える体制で働きたいです | 求める体制がはっきりしている |
| 体調を崩した | 勤務の時間帯が体に合わず、続けるのが難しい状態になりました。今は回復しています | 事実だけで足りる。詳しく話す義務はない |

表の「一人薬剤師がつらい」は、私も3年目の冬に薬剤師が5人から1人になって経験しました。つらさは、体制の言葉にすると相手に伝わります。
いちばん下の行のように、詳しく話さなくてよいこともあります。健康や家庭の事情は、働けるかどうかに関わる部分だけ伝えれば十分です。
嫌がらせやハラスメントがあった場合も同じで、「安全に働ける状態ではなかったため、離れる判断をしました」で止めて構いません。細かく話すほど、面接官は確かめられない話を聞くことになります。なお、実際に相談したいときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどの窓口があります。
言いたくない部分は、「体調の都合です」「家庭の事情です」「安全に働ける状態ではありませんでした」の一言で止めて構いません。
言い換えの型は「事実を一行 → 試したこと → これからやりたいこと」

さっきの表を自分の言葉にするときの順番です。長く話す必要はなく、3つの部品を1つずつ並べるだけで終わります。
- 事実を一行:起きていたことを、人ではなく仕事の言葉で。「薬剤師が5人から1人になり、昼休みが取れない時期が続きました」
- 自分が試したこと:小さくて構いません。「在庫の整理と手順書づくりを進めて、一人でも回る形を作りました」
- これからやりたいこと:次の職場につながる一言。「複数人で確認し合える体制で、在宅にも関わりたいです」
1と3だけでも通じますが、2があると印象が変わります。同じ環境でも、手を打った人と、待っていた人では、入ってからの動き方が違うと考えるからです。
試したことなんて、結果が出ていないものばかりです…。


結果が出ていなくても大丈夫です。私が面接で見ていたのは、成果より、困ったときに手を打つ人かどうかでした。
3の部分は、その会社の求人に合わせて中身を変えてください。在宅に力を入れていない薬局に「在宅をやりたい」と言っても、会社側は置き場所を作れません。どこに行っても同じことを言う人は、志望動機を聞かれたときに困ります。
私が話した退職の理由と、失敗した伝え方
ここは私の一次情報です。うまくいった例と、はっきり失敗した例の両方があります。
失敗:3年目、「他社に誘われている」と漏らした
3年目のとき、自分の市場価値を確かめるために転職活動をしていました。他社から年収600万円の話をもらい、その内容を社内の会話でうっかり話してしまいました。
社内の雑談で、つい口がすべってしまうことってありますよね…。

話はすぐ社長に伝わり、面談に呼ばれ、結果として年収は600万円に上がりました。金額だけ見れば成功です。ところが社長室を出たときに残ったのは、それまで3年かけて積み上げた信用が一気に減ったという感覚でした。
他社に誘われているから給料を上げてほしい、という伝え方は、1回しか使えないカードです。しかも使った後に残るのは金額だけで、関係は元に戻りません。転職活動そのものはやってよいことですが、その情報をどこで誰に出すかは、理由の中身よりも結果を左右します。
成功:6年目、約束の期間を守ってから動いた
6年目の転職は、地域の飲み会で知り合った知人から、別の地域で薬局を経営している社長を紹介されたところから始まりました。提示された条件は、土日休みと年収900万円でした。
このとき私には、4年目に年収を上げてくれた当時の役員との間に、あと1年半は辞めないという約束がありました。残りは半年です。まずその人に報告し、約束の期間を守り、引き継ぎを終えてから移りました。
前の会社を悪く言う必要はありませんでした。紹介がきっかけの転職だったので、次の場所でやりたいことを話すだけで足りたからです。順番を守れたおかげで、辞めた後も関係が悪くなりませんでした。
番外:10年目、独立するときに話した理由
10年目に薬局を辞めるとき、社長から薬局の経営権を譲りたいという話をいただきましたが、辞退しました。薬局の中からできることは10年やってきて、次はブログやYouTube、生成AIといったITの力を使って、外から医療と社会の役に立ちたいと思ったからです。
このときの理由には、前の職場への不満が一つも入っていません。私の最後の退職は転職ではなく独立でしたが、組み立て方は同じです。前の職場で得たものを1つ言い、次にやりたいことを1つ言う。この2つがそろっていれば、理由としては十分に成り立ちます。
なお、この会社では管理薬剤師に加えて人事も担当しました。加算の取得に向けて条件を先に交渉したことを含め、いくつかの評価が重なって、本業の最高年収は980万円になりました。辞めるときに何を話せるかは、在職中に何をやったかで決まる部分もあります。
深掘りされたときの答え方
転職理由を話すと、たいてい一段深く聞かれます。困る質問は決まっているので、先に用意しておくと楽です。
| 聞かれること | 答え方の向き |
|---|---|
| 今の職場で改善しようとしましたか | 試したことを1つ挙げる。結果が出ていなくてもよい |
| 人間関係はどこでも起きますよね | 自分が合わせる部分と、体制として必要な部分を分けて話す |
| 前の職場のどこが不満でしたか | 事実を一行だけ。そのあと、これからやりたいことへ戻す |
| うちでも同じことが起きたら | 誰にどう相談するか、という手順で答える |
| 在職中ですか、退職済みですか | 事実を答える。退職済みなら、その期間に何をしていたかを添える |
「人間関係はどこでも起きますよね」と言われたら、固まってしまいそうです…。

「人間関係はどこでも起きますよね」は、意地悪で聞いているとは限りません。自分の側の問題をどう見ているかを確かめています。ここで前の職場を強く責めると、3つ目の確認事項に引っかかります。
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聞きにくいことや、自分では言いづらい希望条件は、担当者が間に入るサービスを使って先に伝える方法もあります。薬剤師に絞ったサービスでは、エムスリーキャリアが運営する薬キャリAGENTが、専任のコンサルタントが希望条件をうかがったうえで求人を紹介する、と公式サイトで説明しています。どこまで代わりに伝えてもらえるかは担当者や求人先によって変わるので、扱っている働き方や条件は各社の公式サイトで確かめてください。
辞めるときの段取りは、理由の言い方より大事です

面接でどう言うかを考える前に、こちらを決めておくほうが結果的に得をします。薬剤師の世界は地域ごとに狭く、前の職場の人と学会や地域の集まりで会うことも珍しくありません。
- 伝える相手の順番を決める(まず直属の上司。同僚に先に話さない)
- 伝える時期を決める(就業規則の定めを先に読む。多くは1か月前などの期限が書かれています)
- 引き継ぎの一覧を作る(在庫、加算の算定、患者さんごとの申し送り、機械の扱い)
- 最終日まで仕事の質を落とさない

4つのうち、まず1つ目だけ決めておくと、あとの段取りがぐっと楽になります。
1つ目でつまずく人が多いです。私が3年目に失敗したのも、この「誰に何を話すか」でした。辞めると決めていない段階で他社の条件を社内の会話に出してしまい、話は勝手に広がりました。話す相手と中身を間違えると、理由の中身にかかわらず、辞めるまでの数か月が重くなります。
期間の定めのない雇用の場合、民法第627条第1項では、退職の申し入れから2週間で終了すると定められています。一方で、就業規則に「1か月前まで」などと書かれていることもあります。どちらが優先されるかは状況によって判断が分かれるため、もめそうなときは労働基準監督署や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談するのが安全です。
出典:民法(明治29年法律第89号)第627条第1項
引き継ぎは、自分のためでもあります。私は6年目に移るとき、引き継ぎを終えてから動きました。そのおかげで、前の職場ともめることなく次に進めました。運は人が運んでくる、というのは、こういう場面で効いてきます。
よくある質問
人間関係が理由だと、正直に言ったら落ちますか
理由そのもので落ちるとは限りません。面接官が気にしているのは、同じことがうちでも起きないか、の一点です。仕組みの言葉に置き換えて、次にやりたいことまでつなげれば、理由としては伝わりやすくなります。
嘘の理由を作ったほうが安全ではないですか
おすすめしません。入ってから話が合わなくなり、困るのは自分だからです。話す範囲を選ぶのは嘘ではないので、言いたくない部分は「体調の都合です」「家庭の事情です」で止めて構いません。
在職中に転職活動をしていることは、今の職場に言うべきですか
決まるまでは言わないほうが安全です。決まっていない段階で社内に出た話は、本人の意図と関係なく広がります。伝えるのは、次の会社の条件が書面で固まってからで間に合います。
短期間で辞めた場合、理由はどう話せばよいですか
期間の短さは隠せないので、先に事実を言って、そのあとに何を学んだかを添えるのが分かりやすいです。求人票と実際の仕事が違った場合は、その差を具体的に1つ挙げると伝わります。労働条件は職業安定法第5条の3で明示することが求められているので、書面と違ったという事実は説明の材料になります。
出典:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3
転職理由は、担当者にも同じ内容を伝えるべきですか
そろえておくほうが安全です。担当者が会社に伝える内容と、面接で自分が話す内容がずれると、確認の手間が増えます。言いたくないことは、担当者にも「ここは面接で話しません」と伝えておけば十分です。
まとめ
転職理由は、隠すものでも飾るものでもなく、相手が判断できる形に整えるものです。面接官が見ているのは、同じ理由でまた辞めないか、うちで変えられることか、人のせいだけで終える人か、の3つでした。
人間関係が本音なら、人の話を仕組みの話に置き換えて、事実を一行、試したことを1つ、これからやりたいことを1つ。私が独立するときに話した理由も、前の職場への不満は一つも入っていませんでした。
転職理由の型
- 起きていた事実を一行(人ではなく仕事の言葉で)
- 自分が試したことを1つ
- これからやりたいことを1つ
そして、辞めるときの順番は、理由の言い方よりも後に残ります。先に直属の上司へ、引き継ぎを終えてから。私は3年目にここを間違えて、金額だけ手に入れて信用を減らしました。
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どのサービスを使うにしても、最初に渡す言葉は同じです。起きていた事実と、これからやりたいこと。この2つが決まっていれば、面接でも担当者との相談でも、話す順番に迷わなくなります。
