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最近、あのスタッフの様子がちょっと違う気がします。もしかして、辞めようとしているのかな……。

「最近、口数が減ったな」「前より早く帰るようになったな」。 そんな小さな変化に、胸がざわつくことはありませんか? 医療の職場は1人抜けるだけで、シフトも患者さんへの対応も大きく揺れますよね。
この記事では、スタッフが辞める前に見せやすい7つの前兆が分かります。 研究で分かっていることと、私が現場で見たことを分けてお話しします。 前兆に気づいた後の声のかけ方まで、順番にまとめました。
私は堀口 健(Ken)です。1年目から薬局の管理職(管理薬剤師)を10年。 人事(採用面接)とマネージャー(他店舗の売上管理・スタッフの教育)も担当しました。
スタッフが辞める前兆は「見張る」ためではなく「早く話す」ため
先に結論です。 前兆は、辞めるのを止める証拠ではなく、話しかける合図です。
前兆に当てはまっても、その人が必ず辞めるわけではありません。 逆に、何も見せずに辞める人もいます。
だから、チェックして見張るより「最近どう?」と先に話す方が大事だと私は考えています。
そもそも、退職は働く人の権利です。 この記事で目指すのは、無理な引き止めではありません。 「ここで続けたい」と思える職場を、早めの会話で作っていく話です。

前兆の一覧は、スタッフを疑うためのものではありません。声をかけるタイミングを逃さないためのメモだと思ってください。
転職先を探し始めてから辞めるまでは、思ったより短い
気づける期間は、意外と短いかもしれません。 アメリカの調査会社 Gallup が、自分から仕事を辞めた人たちを調べています。
- 対象は、過去1年に自分から仕事を辞めた米国の成人717人(2023年11月)
- 77%は、転職先を探し始めてから3か月以内に辞めたか、探さずに辞めた
- 45%は、辞める前の3か月間に、仕事の満足度・仕事ぶり・将来について、上司からもほかのリーダーからも話を持ちかけられなかった
- 42%は、上司か会社が何かしていれば辞めずに済んだと答えた
出典:Tatel, C. & Wigert, B.(2024)"42% of Employee Turnover Is Preventable but Often Ignored" Gallup(2026年2月16日更新・2026年10月5日閲覧)
この調査は全業種が対象で、医療に限った数字ではありません。 それでも、「様子を見よう」と待っている間に、話は進んでしまうことがある。 そう考えると、少し早めに声をかける意味が見えてきます。
3か月って、シフトを2〜3回組み直したら終わりですね……。


そうなんです。だから「確信が持てたら話そう」では、遅いこともあります。
研究・調査で分かっているスタッフの辞める前兆7つ
ここからは、研究や調査で裏付けのある前兆です。 主に使うのは、辞める前の「ふるまいの変化」を調べた米国の研究です。
この研究では、まず約100人の管理職に「この2年に自分から辞めた同僚・部下」を思い出してもらい、辞める前に見えた行動を集めました。
それを13項目に絞ったあと、管理職が無作為に選んだ部下1人について13項目に答え、12か月後にその部下が辞めたかどうかを追っています。
結果、13項目の平均が4.2点以上の人は、辞める見込みが標準的な人の2倍でした。 満足度など昔から知られている原因とは別に、退職を予測していたのがポイントです。 対象は米国が中心で、医療に限った研究ではありません。
出典:Gardner, T. M., Van Iddekinge, C. H. & Hom, P. W.(2018)"If You've Got Leavin' on Your Mind: The Identification and Validation of Pre-Quitting Behaviors" Journal of Management 出典:Harvard Business Review「13 Signs That Someone Is About to Quit, According to Research」(2016年・2026年10月5日閲覧)
この13項目と、ほかの研究をもとに、医療の職場の言葉で7つにまとめました。 どれも「いつもより」が付くのがポイントです。
| 前兆 | 医療の職場での例 |
|---|---|
| 1. 仕事が「最低限」になる | 決まった業務はこなすが、気づいた改善を言わなくなる |
| 2. チームの手伝いをしなくなる | 混んでいる時に、ほかの持ち場へ手を貸さなくなる |
| 3. 先の約束を引き受けなくなる | 来年の研修・新人の担当・先のシフトの希望を出さない |
| 4. 不満を口にする回数が増える | 仕事のやり方や、上司への不満が増える |
| 5. 早く帰る・休みの取り方が変わる | 定時ちょうどに帰る日や、急な休みが増える |
| 6. 患者さんへの関わりが事務的になる | 声かけや説明が短く、冷たく見える |
| 7. 「きっかけの出来事」の直後 | 異動・シフト変更・同僚の退職・強く叱られた後 |

1〜4は「仕事への気持ち」が離れていくサイン
1〜4は、さっきの13項目にそのまま入っている変化です。 仕事の量や質が落ちる、チームプレーが減る、先の長い約束をしたがらない、不満を口にする。 どれも、辞める前の人に見られやすい変化として挙がったものです。
特に3の「先の約束」は、医療の職場だと見えやすいところです。 「来年の研修、どうする?」と聞いた時の反応が、前と違うことはありませんか?
5は「遅刻」より「休み方」を見る
5の「早く帰る日が増えた」も、13項目の1つです。 休みについては、別の研究があります。
遅刻・欠勤・退職の関係を調べた研究を、まとめて分析し直したものです。 欠勤と退職の間には中くらいのつながりがありました。 でも、遅刻と退職の間には、直接のつながりはほとんどありませんでした。
出典:Berry, C. M., Lelchook, A. M. & Clark, M. A.(2012)"A meta-analysis of the interrelationships between employee lateness, absenteeism, and turnover" Journal of Organizational Behavior
つまり、遅刻が増えたから辞める、とは言えません。 見るなら、急な休みや休みの取り方の変化の方です。
休みが増えるのは、体調や家庭の事情のこともあります。前兆と決めつけず、まずは「大丈夫?」と体を気づかう声かけから入ってください。
6は医療の職場ならではのサイン
6の「患者さんへの関わりが事務的になる」は、医療の研究でも出てきます。 ヨーロッパ4か国・8病院の医師381人と看護師1,351人に、アンケートで聞いた研究です。
「辞めたい」という気持ちと結びついていたのは、2つでした。 心がすり減って患者さんに冷たくなること(研究では「脱人格化」と呼びます)と、仕事への不満です。 看護師では、仕事への前向きさも特に関係していました。
出典:Maniscalco, L. ほか(2024)"Intention to leave, depersonalisation and job satisfaction in physicians and nurses: a cross-sectional study in Europe" Scientific Reports
これは1回きりの調査なので、どちらが先かまでは分かりません。
それでも、患者さんへの関わりが変わってきたら、本人の心がすり減っている合図かもしれません。 責める前に、まず「忙しすぎない?」と聞いてみてください。
7は「出来事の直後」に声をかける
7は、少し考え方が違います。 人は、不満が少しずつたまって辞めるより、直前の出来事がきっかけで辞めることの方が多い。 辞めた1,200人以上を調べた研究で、こう報告されています。
出典:Holtom, B. C., Mitchell, T. R., Lee, T. W. & Inderrieden, E. J.(2005)"Shocks as causes of turnover: What they are and how organizations can manage them" Human Resource Management
この考え方のもとになった研究は、病院を辞めた看護師44人の退職面談と郵送アンケートで確かめられています。
出典:Lee, T. W., Mitchell, T. R., Wise, L. & Fireman, S.(1996)Academy of Management Journal 39巻1号(https://doi.org/10.5465/256629)
医療の職場なら、異動・シフト変更・同期の退職・強く叱られた日などが当てはまります。 出来事があった週に、一度声をかけるだけでも違います。
研究で分かっていること
- 辞める前の「ふるまいの変化」は、その後の自己都合退職と結びついていた
- 遅刻より、欠勤の方が退職とつながりやすい
- 医師・看護師では、患者さんに冷たくなることと仕事への不満が「辞めたい」と結びついていた
- 不満の積み重ねより、直前の出来事がきっかけになることが多い
中途で入ったスタッフは、特に気にかける
もう1つ、日本の看護職の数字を紹介します。 日本看護協会が全国の病院に聞いた調査で、3,502施設から答えが返ってきたものです。
2024年度の離職率は、正規雇用の看護職員で11.0%でした。 新卒で採用した人は8.4%、経験者として採用した人は16.1%です。
出典:日本看護協会「2025年病院看護実態調査」(2026年)/労働政策研究・研修機構のウェブ記事による要約(2026年4月8日掲載・2026年10月5日閲覧)離職率の計算のしかたは協会の報告書によります

経験者として入った人の方が、数字が高くなっています。 看護職の数字ですが、薬局やクリニックでも、中途のスタッフは「即戦力」として放っておかれがちではありませんか?

経験者ほど「聞きにくい」こともあります。最初の数か月は、こちらから様子を聞きにいくくらいでちょうどいいと思っています。
私の現場で見たこと|前兆に気づけなかった管理職1年目〜3年目
ここからは研究ではなく、私の経験です。 正直に言うと、私は前兆に気づけなかった側の管理職でした。
新卒で配属されたのは、毎日たくさんの患者さんが来る、とても忙しい薬局でした。 私は1年目から、その店の管理薬剤師として働き始めました。
緩衝材だったスタッフの退職をきっかけに、連鎖退職が起きた
3年目の冬のことです。 私は「これで皆が働きやすくなった」と、少しほっとしていました。
そんな時に、職場の空気をいちばんやわらげてくれていたスタッフが辞めることになりました。 私には、前触れが見えていませんでした。
そこからスタッフどうしの衝突が増え、退職が続きました。 多い時は5人いた薬剤師が、最後は私1人になったんです。
いちばん頼りにしていた人ほど、サインが見えにくいんですね。


周りに気を配る人ほど、自分のしんどさを表に出さないのかもしれません。表面の空気は整えても、根っこの忙しさは変わっていなかったと、今振り返って思います。
この時の話は、部下が辞めるのは自分のせい?の記事でくわしく書いています。
「休みたい」は、言葉にならないことがある
私が働き始めた1年目のころ、その店は誰も有給を取ったことがない職場でした。 私が先に有給を取ると、少しずつ皆も休むようになりました。
その時、スタッフから「今まで代休を貯めて休んでました。有給取って大丈夫なんですか?」と聞かれました。 休みたくても言えない。そんな空気が、当たり前になっていたんです。
休みにくい職場では、「休みの取り方の変化」という前兆そのものが見えません。 前兆を探す前に、まず休める職場かどうかを見直すのも大事だと感じました。
不満は、聞きにいくと中身が分かる
連鎖退職が続いていたころ、休みの日に、仕事のつらさをつづった長いメッセージが届いたこともあります。 不満は、そこまでたまってから届くこともあります。
逆に、早めに聞いてうまくいったこともあります。 1年目に、厳しいと感じていたスタッフに、思い切って理由を聞いてみました。 答えを聞いて、その人の印象ががらりと変わりました。
受け入れられなくても、理解できたら許せることがあります。 これは、私が今も大事にしている考え方です。

転職後の店舗では、産休や育休の穴を、スタッフが知人を紹介して埋めてくれるほどの職場になりました。環境を整えることを、地道に続けた結果だと思っています。
前兆に気づいた後の声のかけ方|5つのステップ
前兆に気づいたら、次は声のかけ方です。 Gallup は、上司が待たずに定期的に話すことをすすめています。 中身は、待遇と将来の見通し・毎週の短いやりとり・仕事の邪魔になっているものを取り除くこと、です。
出典:Tatel, C. & Wigert, B.(2024)"42% of Employee Turnover Is Preventable but Often Ignored" Gallup(2026年2月16日更新・2026年10月5日閲覧)
これを、医療の職場で使いやすい形にしました。
- 2人で話せる時間を5〜10分つくる(休憩前・閉店後など、患者さんがいない時)
- 「辞めるの?」とは聞かず、「最近どう?」「疲れてない?」から入る
- 見えた変化を責めずに伝える(「前より忙しそうに見えて、気になってた」)
- 相手の話をさえぎらずに聞き、すぐに説得しない
- 上司ができることを1つだけ一緒に決め、次に話す日を決める

言わない方がいい言葉
逆に、次のような言葉は相手を身構えさせやすいです。
| 避けたい言葉 | 言いかえの例 |
|---|---|
| 最近やる気ないよね | 最近、疲れてない? |
| 辞めるつもりなの? | 仕事で困っていること、ある? |
| みんなも大変なんだから | 今いちばんしんどいのは、どこ? |
| 辞められたら困るよ | 何か変えられることがあれば教えてほしい |
「辞められたら困る」は上司の本音ですよね。 でも、相手には引き止めの圧に聞こえることがあります。 主語を「私が困る」から「あなたが困っていること」に変えるのがコツです。
話を聞いて「辞めたい」と言われたら、どうすればいいですか?


まずは「話してくれてありがとう」と伝えてください。理由を聞いて、直せることがあれば直す。それでも決めたなら、気持ちよく送り出すのがいいと私は考えています。
上司と部下が定期的に1対1で話す「1on1」を、もっと知りたい人にはヤフーの1on1が入り口になります。 日本の会社で1on1をどう続けてきたかを、実践をもとにまとめた本です。
今日からできること
- 前兆を「辞める証拠」ではなく「話しかける合図」として見る
- 出来事(異動・シフト変更・同僚の退職)があった週に、一度声をかける
- 「辞めるの?」ではなく「最近どう?」から入る
心の不調が心配な時は、1人で抱えない
患者さんへの関わりが冷たくなる、休みが増える。 こうした変化が、心の不調から来ていることもあります。 上司が診断をする必要はありませんし、決めつけない方が安全です。
厚生労働省の「こころの耳」には、働く人と、職場で支える人のための情報と相談先がまとまっています。
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よくある質問
前兆に当てはまったら、もう辞めると思った方がいいですか?
いいえ、当てはまっても辞めるとは限りません。 研究で分かっているのは「辞めやすい傾向」までです。 話しかけるきっかけとして使うのがおすすめです。
忙しくて、1人ずつ話す時間がありません。
全員と長く話す必要はありません。 前兆が見えた人や、出来事があった人から、5分だけでも十分です。
前兆に気づいていることを、本人に伝えてもいいですか?
「見張っていた」と受け取られない伝え方なら、伝えてかまいません。 「最近忙しそうで気になってた」のように、心配している気持ちとして伝えるのがいいと思います。
まとめ|スタッフが辞める前兆は、話しかける合図
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- 辞める前兆を、研究と調査をもとに医療の職場向けに7つにまとめた
- 遅刻より「休み方の変化」、そして患者さんへの関わりの変化を見る
- 異動やシフト変更などの出来事の直後は、特に声をかけたい
- 前兆に気づいたら、見張るより「最近どう?」と先に話す
気づいた時が、いちばん早く話せる時です。
今日できることは1つだけです。 気になっているスタッフに、「最近どう?」と声をかけてみてください。
